Introduction
昨年でソロデビュー40周年を迎えた矢野顕子が今年新たに生み出すのは、7年振りとなるピアノ弾き語りアルバム。これまでも共に名作弾き語りアルバムを作り出してきた盟友エンジニア、吉野金次を監修に迎え、自身のライフワークといえる作品に臨んだ。
制作の過程を追った同名映画がリマスター上映され記憶にも新しい、弾き語りアルバム第一弾「SUPER FOLK SONG」から25年。唯一無二で常に先進的な音楽性を変わらず持ちながら、その演奏技術はさらに進化・深化。一曲の演奏にかける矢野のストイックさが表れたスリリングな一面と、同時に活動を重ねてきたことにより増してきた矢野本人と音楽に現れる余裕やあたたかみ、親しみやすさの両面を感じることが出来るアルバム。
収録曲にはアルバムタイトル曲でもある、NHKドラマ「ブランケット・キャッツ」のエンディングテーマとして書き下ろされた、宇宙を想起させる言葉を用いながら、日常との共感も呼ぶ「Soft Landing」や、東京ミッドタウン10周年記念曲で、新しくも懐かしい、古き良き歌謡曲を想起させる「六本木で会いましょう」、昨年開催された「矢野顕子 ふたりでジャンボリー 糸井が書いて矢野が歌う1101曲(の予定)」の中で生み出された、「SUPER FOLK SONG」の続編(曲中の登場人物のその後を描いた楽曲)となる「SUPER FOLK SONG RETURNED」ほか、糸井重里との黄金タッグ”イトイヤノ作品”の新曲3曲を含む、弾き語りアルバムシリーズとしては最大となる7曲のオリジナル曲を収録。
さらに今回も岸田今日子、YUKI、フジファブリックなど、矢野本人こだわりの選曲によるカバー曲を6曲収録。せつなさ、さわやかさやあたたかさを持った計13曲の楽曲群を、“今の矢野顕子”が奏でる。
また今回は矢野顕子がドイツピアノ「ベヒシュタイン」に出会い、録音に使用した、キャリア史上初作品ともなる。
ベヒシュタインピアノはスタインウェイピアノなどと同等の歴史をもち、みずみずしく透明感ある響き、柔らかなタッチ、歌心にあふれた音を鳴らす、リストからルトスラフスキー、バーンスタイン、セシル・テイラー、ビートルズ、チック・コリアなどに愛用されていたピアノ。矢野はこれまでスタインウェイピアノなどを主に使用してきたが、エンジニアの吉野金次の提案により、今回の録音ではベヒシュタインピアノの「C.Bechstein D-280 Ser. Nr. 193,749」を使用し、新しい音の獲得を実現。音色の変化に加え、“ベヒシュタインピアノとの対話”によって演奏時のアレンジにも今までにないアプローチが生まれ、演奏者と楽器の呼応による作品への変化を感じることのできる、矢野とベヒシュタインの出会いによる音楽的奇跡を収めた。
録音は最もベヒシュタインの録音に適すると国内外で評価の高い、神奈川県相模原市の「神奈川県立相模湖交流センター」のホールにて実施。レコーディング/ミックスも吉野金次を監修に迎え、シンプルだからこそ音の鳴り方ひとつひとつまでこだわり抜いた作品となった。
40周年を迎えた矢野顕子の原点回帰的作品でありながら、キャリアの新たな一歩ともなるアルバムである。
実際にはピアノを弾いて同時に歌っているので、
弾き歌いというべきなのですが、
やっぱし“弾き語り”という言葉のほうがいいですね。
まあ実際コンサートでは歌だか語りだかわかんないこともあるしね。
ステージ上はひとりだけど、皆さん一人一人に歌ってるんです。
コンサートにいらして、CDをお買いになって、それを感じてくださいましね。
じゃ、練習しますんで、失礼します。
矢野顕子